文化庁が選定する「歴史の道百選」。文化庁では、古くから人や物や情報までもが交わる道路や水路を、日本の文化や歴史を語り継ぐ材料として、保存していくことを目的に平成8年から全国各地の優れた「道」を「歴史の道」として選出しています。
天王町駅から元町橋まで約1時間。この道も「歴史の道百選」に選ばれた道。今回は横浜の歴史や文化に触れながら、徒歩4000歩のお散歩を楽しみましょう。
天王町駅東口、南改札を出ると見えてくる天王町駅前公園。公園には3つの看板が並びます。
1つ目の看板「歴史の道 旧東海道」にはいくつかの史跡への距離が示され、2つ目の看板には「横浜市地域史跡 旧帷子橋跡(きゅうかたひらましあと)」とあり、横浜市教育委員会が史跡の歴史について示しています。
なんとこちらの帷子橋、帷子川の流れがそれまでの相鉄線天王町駅南側から北側に付け替えられたのに伴い、橋の位置が替えられたのだそう。かつての帷子橋跡が天王町駅前公園にあるということなのですね。
「歴史の道 東海道保土ヶ谷宿周辺散策案内図」の看板も設置され、天王町駅と保土ヶ谷駅を含む「歴史の道」の東西数kmの区間が地図で示され、道中の史跡などが紹介されています。
さらに「東海道五十三次 保土ヶ谷宿」の石碑も。旧帷子橋周辺は景色や風景を描いた水彩画や、俳句や詩にも詠まれる機会が多かったのだそう。初代広重が描いた「東海道五十三次 保土ヶ谷」が有名ですね。
お散歩スタート
天王町から保土ヶ谷駅手前まで、歩みを進めていきましょう。電線がなく景色がすっきりとした通りを歩きます。4〜5階建ての建物が連なっていました。道中「旧中橋跡(きゅうなかのはしあと)」を説明した看板もあります。
さらに進むと道が二手に分岐していました。
「歴史の道」は保土ヶ谷駅に繋がる左手の大きな道ではなく、右手の一車線、車両一方通行の道を直進していきましょう。
史跡跡地が続きます
さすが「歴史の道」ですね。歩みを進めると助郷会所跡、問屋場跡(といやばあと)、高札場跡など、看板が点在していました。建築物は残ってはいないのですが説明看板をみつけ、読んでみる度に当時の風景を想像できます。
更に進むと、歴史を感じる4本の石碑を発見。案内板も設置されています。案内板には石碑の役割が書かれていました。こちらの石碑は「道標」であったのだそう。石碑の周辺だけ、タイムスリップしたような歴史の趣を感じますね。
「程ヶ谷宿お休み処」の札をみてみると「保土ヶ谷」が「程ヶ谷」と表記されていました。当時の風景をイメージさせる町の工夫にも触れられました。
宿泊や休憩施設として栄えた保土谷宿
踏切を越えると国道1号線に突き当たります。見上げれば高台。ここで西側を右折します。
左側の車線を歩いて行くと「本陣跡」「脇本陣跡」など、保土谷宿が宿泊や休憩施設として栄えていたことをうかがえる看板がいくつかあります。そのうちの1つ「脇本陣(水屋)跡」は、今や消防署の出張所になっていました。
明治2年から残る「旅籠屋(本金子屋)」跡
「歴史の道」にあったといわれる「歴史的建造物」は、令和5年の現在、あまり残っていないのが実状。そんな実存する数少ない歴史的建造物の1つに「旅籠屋(本金子屋)」跡がありました。現在は保土ヶ谷区役所の「まちかど博物館」となっているんだそう。
保土ヶ谷宿「お休み処」
さらに歩みを進めると、「お休み処」が現れます。
職員さんの話によれば、最近はロシアからの観光客など外国から訪問する人も多いんだとか。
「お休み処」が位置しているのは、箱根駅伝の難所としても有名な権太坂付近。本陣や旅籠などの施設が多く集まるこの場所は、難所前後の一休みポイントとしても重宝されていたんだそう。
以前は行き倒れた人もいたという箱根の坂道、駅伝の難所。坂道挑戦への英気を養うため、あるいは坂道を攻略し自らを労う場所として、昔からたくさんの人に愛され続けるスポットであったようです。
前近代の街道「一里塚跡」
さらに進むと「一里塚跡」が見えてきます。
和の雰囲気がひろがる「一里塚跡」には松林をはじめ、風情ある橋や木造の灯籠が設置されていました。
傍らには川が流れ、こいのぼりも泳ぎます。
閑静な住宅街そして自然が共存する道へ
保土ヶ谷駅手前、再び道が2つにわかれます。左手の国道1号線の大通りを避け、右手の通りを直進します。このあたりまで来ると飲食店、量販店はあまり見かけなくなってきます。
建物も2階〜3階建ての住宅が並びます。
「旧元町橋跡」の看板は、花や草などに囲まれてひっそりと設置されていました。こちらの看板を右手に通過すると、元町ガードの丁字路に突き当たるので左折していきます。
もくもくと歩き続けて川を渡ると、穏やかな時間の流れる風景が広がっていました。
いつの間にか、歩き始めた天王町駅周辺の繁華街の景色からすっかり閑静な住宅街、そして自然溢れる景色へと移り変わっていたようです。
お散歩を終えて
今日のお散歩はこちらで終了。天王町駅へ戻るのであれば来た道を折り返すもよし、国道1号線へでて、また違う景色を歩いてみるのもいいでしょう。
「歴史の道」には、現存する歴史的建造物はあまりありません。それでも、史跡の看板を追いながら当時の様子を想像し歩いてみるのも気持ちのよいものでした。
天王町駅の栄えた風景から、徐々に郊外の景色へと移り変わる過程を楽しむこともできました。都会の喧騒に疲れてしまった方にこそおすすめしたい「歴史の道」、ぜひ1度訪れてみてください。
歴史の道(天王町駅―元町橋間)
住所:神奈川県横浜市保土ヶ谷区天王町・岩間町・帷子町・保土ヶ谷町