新緑のゆめが丘でお遍路体験。横浜・泉区「密蔵院」のお砂踏みへ

新しく整備されたゆめが丘に、昔から私たちの暮らしにそっと寄り添ってきてくれたお寺があります。

四国まで行かなくても八十八ヶ所巡り体験ができる「お砂踏み」と、新緑に包まれるやさしい時間。密蔵院(みつぞういん)を訪ねてみました。

ゆめが丘駅から、緑の住宅街を抜けて

横浜市泉区、相鉄いずみ野線ゆめが丘駅前の、環状四号線として整備された通りを戸塚区原宿方面へまっすぐ進んでいきます。するとその先にあらわれるのが、今回の目的地「密蔵院」です。

広い通りから長い階段をのぼるだけで、まるで別世界のような静寂が待っています。

住職の「来る者は拒まず」というその精神通り、ちょっと疲れた心にそっと寄り添ってくれる、そんな場所です。

石段の先に広がる、心ほどける世界

長い石段をゆっくりと登りながら耳をすませると、通りの車の音がだんだんと遠ざかり、風の音と鳥のさえずりだけが聞こえるようになります。
見上げると青い空が広がり、手入れされた木々が出迎えてくれます。

「ここ、ほんとうに横浜?」そんな気持ちになる、特別な空間。
木漏れ日が差し込む参道を抜けると、大きく広がった先に本堂が見えてきます。

歴史ある本堂と、稲荷信仰の名残り

密蔵院は、正式には「南竺山 正覚寺 密蔵院(なんじくさん しょうかくじ みつぞういん)」と称される真言宗の寺院です。

この名称には、弘法大師・空海の教えを受け継ぐ高野山真言宗としての由緒と、地域の信仰に根ざした歴史がこめられています。
寺号が刻まれた石柱も残されており、静かながらも誇り高い佇まいが印象的です。

本尊は願行(がんぎょう)作とされる「大聖不動明王(だいしょうふどうみょうおう)三尊」ですが、秘仏となっていて、厨子(ずし)のなかに納められています。

別尊として、弘法大師、大日如来が両脇に祀られていて、そちらは拝見することができます。

実はこのお寺、江戸時代には周辺で盛んだった稲荷信仰の中心として栄えていた歴史もあるのだとか。 かつては、稲荷神社と並ぶように堂塔が立ち並び、春にはハクモクレンの大木が咲き誇り、参詣の人々でにぎわったといいます。

現在、その大木は環状四号線の開通によって弱ってしまい、本堂横に移されています。しかし寺院入口の階段の下には「木食観正(もくじき かんしょう)供養塔」も残されており、この地の信仰の厚さを物語っています。

八十八ヶ所の祈りを、足元から

訪れたならぜひ体験したいのが、境内の「四国八十八ヶ所お砂踏み」。

弘法大師像の足元には、八十八ヶ所の霊場の名前が刻まれたプレートが並び、そこに埋められた筒の中には、住職自らが実際に巡礼して持ち帰った”お砂”が納められています。

この風習は「お砂踏み」と呼ばれ、ひとつひとつを踏みしめていくことで、四国を巡礼したのと同じご利益が得られるといわれています。

実際に四国まで行けない人も、ここで巡礼の功徳を感じて欲しいという気持ちでつくられたのだそうです。

実際に歩いてみると、体は横浜にいても、心は遠い巡礼の道を旅しているような、不思議なひとときを感じることができます。

住職が在寺しているときは、「結願之証」をいただける場合もありますので、声をかけてみてくださいとのことでした。

ひっそりとした庭園の静けさ

密蔵院の魅力は、なんといっても季節の風景。 5月は、新緑がいちばん美しい季節です。 やわらかな若葉が境内を包み込み、木漏れ日が心地よく差し込みます。

中庭につくられた石と水、そして草木が調和した小さな和風庭園にはベンチが置かれ、その落ち着いた美しさに心がなごみます。
庭園へは境内からの通路がありますので、誰でも気軽に行くことができます。

ベンチに腰を下ろし木々の緑に目をやると、日々の忙しさを忘れてほっとする時間を過ごすことができます。

住職が在寺のときは、「御朱印」もいただける場合もありますので、ぜひ声をかけてみてください。

密蔵院は、観光名所ではありません。
でもだからこそ、ふと立ち寄った人に、深い癒しとやさしさを与えてくれる場所です。

「今日はちょっと、ゆっくりとした時間を過ごしたいな」そんな日にこそ、相鉄線にのって訪れてみてください。
弘法大師と、静かな八十八の祈りが、そっとあなたを迎えてくれるはずです。

南竺山 正覚寺 密蔵院(なんじくさん しょうかくじ みつぞういん)
住所:神奈川県横浜市泉区和泉町727
アクセス:相鉄いずみ野線「ゆめが丘駅」または市営地下鉄「下飯田駅」から徒歩約25分、神奈川中央交通バス下05路線「ゆめが丘駅」→「密蔵院前」バス停から徒歩約1分
TEL:045-802-0427
駐車場:あり

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。